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19/10/28【ルヴァン】新井章太。はい上がってきた男が示した勝利への道標

(写真:Getty Images)

 誰よりも“勝ちたい”と願っていた男が、この大舞台でヒーローになった。

 チーム在籍7年目。紆余曲折という一言では言い表せないほど、一つしかない守護神の座を勝ち取るために多くの苦労を重ねてきた。一方で、普段から明るく、先輩・後輩問わず、誰とでもコミュニケーションをとるのが新井という男。長くこのチームのムードメーカー役を担ってきた。

 ただ、そんないつでもポジティブな男が、行き場のない迷路に迷い込んだ時期があった。それは今年の最初のこと。連覇を果たしたチームに「自分も何か力になりたい」と考え、まずは試合に出るためにオフから体作りに専念。守護神の座を奪うには「最初が勝負」と自分にプレッシャーをかけてキャンプに臨んだ。しかし、手ごたえをつかみつつある中で迎えた富士ゼロックス・スーパーカップ。先発に自分の名前がないことを知ったとき、ふと冷めた自分がいた。「結局そうなるのか」。それから割り切ってやろうとしても気持ちが入らない。「今までこんなことは一度もなかったし、どうしたらいいのか分からなくなった」。かける思いが強かっただけに、気持ちの落差も大きかった。

 それでも家族に支えられ、「試合に出られなくて満足できないのなら、毎日自分が満足いくまで充実した練習をやろう」と頭を切り替えた。通常のトレーニングが終わっても気が済むまで攻撃陣のシュート練習を受ける。攻撃陣を気持ちよく終わらせる気はさらさらない。自分が満足いくまで止めてみせた。そして、そんな日々が新井をいつしか強くしていた。

 決勝の延長前半99分。川崎Fは福森のゴールでリードを許した。直接FKを止められなかった新井にとっては悔しさの残る場面だ。ただ、周りを見てすぐに声をかけた。

「やっぱり落ち込むじゃないですか絶対。10人だし。“さあ、ここからどうする”みたいになったときに気持ちを強く保たないと最後までズルズルいってしまう。一番後ろでゴールをとられた選手が言うのは結構難しい。だけど、そんなことは言っていられない試合だった。まだ延長の後半もあったし、その先もあった。『気持ちのところだけは強く持て』と言った」

 そんな新井に感化されたチームは最後まであきらめない姿勢を貫き、延長後半に同点ゴールを奪取。決めたのは新井と仲のいい小林だった。そして、あとは自分の仕事。PK戦で2本のキックを止め、最高の瞬間を味わった。

「『“勝たなければいけない”ではなく、“勝ちたい”と思おう』とみんなに伝えた。本当に難しい試合になったけど、最後まであきらめなかったことがすべて」

 どんなときでも“あきらめなかった男”に、勝利の女神は微笑んだ。          

文・林 遼平

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