日本代表・Jリーグ日本代表・Jリーグ

19/09/30【Jリーグ】“負けなかった”浦和。このPKを転機に

(写真:Getty Images)

 残留争い直接対決となった28日の鳥栖vs浦和の一戦。合計6ゴールが生まれた激戦は、後半アディショナルタイムに浦和が追いついてドローに終わった。

 興梠も、ファブリシオも、武藤も、そしてマウリシオもピッチ内にいない。「いつも蹴っている人がいないな。誰が蹴るんやろ」。すると、ゲームキャプテンの槙野が近づいてきた。「オマエが蹴れ」。

 杉本は、2-3で迎えた後半アディショナルタイム、大事なPKを託された。

 その直前、槙野は大槻監督の下へ確認に走っている。そこで指揮官にキッカーを指名された槙野だったが、「いまの浦和の状況、順位を考えたときに、僕が蹴るよりもこの選手に救ってほしい」と考え、大槻監督に頼みこんだという。

 その思いは、ほかの選手も同じだった。「信じて託そう、と声をかけた」とピッチ外でも仲のいい長澤。岩波はボールを持っていって杉本の肩を叩いた。

 槙野にキッカーに指名された際に「今までのPKの場面の中で一番緊張した」という杉本。先の天皇杯ではPKを失敗し、試合後にはサポーターに罵声を浴びせられた。バスの外で叫ぶ彼らを見て「本当に責任を感じていた」。そのわずか3日後に訪れた、再びのPKの場面。体が硬直するのも無理はない。

「ここで外したら負けてしまう…」

 ただ、仲間の声かけがうれしかった。「外してもいい。自信をもってやれ」。するとすっと緊張の糸がほぐれた。GKを見る余裕が生まれ、その動きを見て、冷静に右へと蹴り込んだ。「僕らは背中を押してくれるサポーターの後押しがないといけない部分がある」。同点ゴールを決め、逆転を目指してボールをセンターマークに置くため走った杉本。鳥栖まで駆け付けた浦和サポーターに、彼の思いは届いたか。

 引き分けに持ち込み、残留争いの一戦で追い付くゴール。それを杉本が決めた意味は大きい。いまの浦和は、興梠以外のゴールゲッターを探している。この日、武藤は待ちに待った今季リーグ戦初ゴールを決めた。そして、杉本も約半年ぶりの得点。ただ、「それでも勝てていない。しっかり反省して、次は勝点3を」。それは皆の思いだ。多くのものに“負けなかった”このPKを、転機としたい。

文・田中 直希

Copyright (c) Jupiter Telecommunications Co., Ltd. All Rights Reserved.