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19/09/21【ACL】興梠慎三、満身創痍の中で見せた珠玉の技術

(写真:Getty Images)

 17日、ACL準々決勝第2戦で上海上港と対戦した浦和は、1-1のドローで準決勝進出を決めた。貴重なゴールを決めたのは浦和の大エース・興梠慎三だった。

 強がって「ケガではない」と言いながら、本当は痛かった。痛み止めの薬を投与して、ルヴァンカップ準々決勝第2戦・鹿島戦でねん挫した右足首をかばっている状態。さらに14分、相手のタックルで左足も痛めた。「左足の感覚はないし、右足首は痛いし…」。満身創痍。それでも、興梠はピッチに立った。勝ちたいからだ。自分のゴールで勝たせたかったからだ。

 主導権を握る展開ながら、なかなかゴールが決まらない。イヤな流れだった。浦和は失点する試合がずっと続いている。だから最低でも、1点は奪いたい。そんな流れの中で39分、左サイドの関根にいい形でボールが渡る。仕掛けのタイミングだ。彼は切り返しから右足でインスイングのボールを送った。見据える先は、傷だらけのエース。「DFの視野から外れて、相手とは逆に動く。それを練習から心がけているし、クロスを上げる人にも(その動きを見て合わせるよう)要求している」(興梠)。

 関根はマークを外した興梠へドンピシャのボールを送った。興梠も、コースは甘かったが渾身のヘディングでGKの門を破った。胸のエンブレムをつかんで少しの間口づけし、右のこぶしを振り上げる。ゴール後の、いつものパフォーマンスだ。苦しむチームを救う、ACL3戦連続となる得点だった。

 敵将も、彼の働きについて言及した。「特に30番の興梠選手はすごくいい選手だと思うし、彼がわれわれにとって大きな問題になっていた」。前線からの守備で相手から自由を奪い、味方を押し上げる。パスを“出したくなる”最高の動き出しで裏に抜ける。そして、決める。体は悲鳴をあげていたのだろう。でも、そんな素振りは見せずにチームを引っ張った。

「いやあ、ケガ、治らないな。ケガしない体だったんだけどね。30代になって、変わったのかな」。苦笑いして囲み取材を終えた興梠。“なんてエースだ”という記者陣からの感服の視線を受け、照れくささから冗談を飛ばしたのだろうか。その余裕にも、貫禄が漂っていた。

文・田中 直希

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