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19/08/28【Jリーグ】鳥栖とトーレス、物語はこれからも

(写真:Getty Images)

 夢のような日々だった。Jリーグで最もホームタウンの人口が少なく、かつては経営問題から消滅の危機も経験した地方都市のクラブに世界的なスーパースターがやってきた。チームメートは目を輝かせ、サポーターは練習場、スタジアムを問わずその姿に熱い視線を向けた。サポーターはサインを求め、狂騒し、練習場だけでなくチームがアウェイに移動する際の駅や空港にまで押し寄せた。鳥栖という小さなクラブにもたらした圧倒的な熱量。それは飛躍を期す鳥栖にとってかけがえのない経験、そして、財産となった。

 昨夏に加入して1年、その人柄はさまざまなところで見ることができた。自身の幼少期、ある選手からサインをもらえなかったことがあった。その経験から「自分のように悲しい思いをする人が出てほしくない」とどれだけ人が集まっても丁寧にサインを書き続けた。しかし、厳しく律する顔も持つ。サインを書いているとき、押し寄せる人の波で小さな子どもが痛みを訴えるとサインを中止した。自分自身の価値を分かっているからこそ、そこからさまざまな学びを関わる人々に与えてきた。

 そして、自分自身も日本を学ぼうとしてくれた。「日本が持つべきリスペクトの基準がこの国の人にはある」と尊敬の念を寄せた。輝かしいキャリアを持ちながら、決して傲慢な姿を見せることはなかった。

 盟友であるアンドレス・イニエスタ、ダビド・ビジャとの抱擁。引退セレモニーでのスティーブン・ジェラードからのビデオメッセージ。「それは涙をこらえ切れない瞬間だった。でも、今日は悲しくない。私の偉大なサッカーの歴史をこういう形で終えることができて、いまは幸せ
な気持ち」と感傷に浸りつつもその表情は晴れやかだった。

 しかし、鳥栖とフェルナンド・トーレスの物語は終わりではない。「このクラブは常に謙虚な気持ちで、常に野望、野心を持ってプロジェクトに取り組んでいく。そういった勇気を持っている」とトーレスは鳥栖について語る。自身のキャリアに、鳥栖というクラブを重ねているところもあるのかもしれない。今後は立場を変えて鳥栖に力を貸してくれる。Gracias Torres.夢のような日々はこれからも続く。       

文・杉山 文宣

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