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18/10/31【ラ・リーガ】なぜ大差がついたのか。クラシコ詳細レビュー

(写真:Getty Images)

 5-1というのは内容を考えると誇張された結果だろう。90分間のうちレアル・マドリーの攻勢は後半開始から15分間ほどで、残り時間はバルセロナペースだったことを考えると妥当に見えるが、試合には流れというものがある。モドリッチのシュートが入っていれば流れが変わりレアル・マドリーの攻勢は長くなっていたはず。同じことはバルセロナの4、5点目にも言えて、3-1となってレアル・マドリーがあきらめたことで流れがバルセロナ側に一方的に傾斜した。流れをつかむかつかまないかの分岐点はサッカーの場合、一瞬に過ぎないものの決定的なゴールであり、小さな差が最終的に大差になってしまうことがよくある。

 とはいえ、バルセロナが勝利に相応しくなかったわけではまったくない。不名誉な前半45分間の混乱の後いくら立て直したと言っても、最大45分間の攻勢でレアル・マドリーが勝とうとするのは虫が良過ぎた。

 バルベルデ、ロペテギの両監督が用意した布陣は同じだった。FW(デンベレ、アセンシオ)ではなく4人目のMF(ラフィーニャ、イスコ)を入れる。[4-4-2]用の選手構成ながら並びは[4-3-3]のまま、というところまで一緒だった。が、ゲームプランが違った。

 バルセロナが前掛かりのプレスで攻勢に出たのに対し、レアル・マドリーは待った。ボールをなるべく早く奪い返しボールを持つことで試合を支配するための4人目のMF投入だったはずだが、その理屈を通したのはバルセロナだけでレアル・マドリーは攻守の切り替えしの速さとカウンターに光明を見出そうとしたのだろう。が、結果はバルセロナの圧倒的なボールとゲームの支配、レアル・マドリーは防戦一方という展開だった。当然の帰結として30分で2-0となるのだが、影響力としての両監督の力量も全然違った。

 ラフィーニャは[4-4-2]の形でも[4-3-3]の形でも右サイドに入り、相手左SBマルセロを追い掛けたが、[4-3-3]で右サイドのベイルは7分で相手左SBジョルディ・アルバのマークを放棄。急造右SBナッチョ(なぜ本職のオドリオソラでなかったのか?)がコウチーニョに引っ張られると、レアル・マドリーの右サイドにジョルディ・アルバ用の通行自由の大穴が空いた。ベイルがマークをさぼってもチームがボールを保持し相手を押し込んでいれば、穴は開かない。が、ボールは圧倒的にバルセロナのもので、彼らは左サイドでフリーのジョルディ・アルバをボールキープの逃げ道としてもセンタリング役としても使い放題だった。

 ロペテギ監督は、言うことを聞かないベイルをあきらめて、[4-4-2]にして右サイドの穴を埋めようとしたが、今度はイスコが言うことを聞かない。自由過ぎるイスコが持ち場の左サイドを離れるので、右サイドのモドリッチがジョルディ・アルバのマークに専念できず、カウンターに転じようにも他のMFとポジションが重なってスムースにボールが出せない。

 イスコのクリエイティブなプレーはレアル・マドリーの得点シーンを見ればわかるように大きな武器になる。だが、どこでもいつでもボールを持ちたがり、チームよりも自分のプレーを優先することで、組織に損害を与えることもある。ロシアW杯で露呈した動き過ぎ、持ち過ぎがここでも出てしまっていた。アナーキーさは攻撃時には意外性であり創造性となり得るが、守備時には無秩序しか生まない。誰にも明らかだった大穴が45分間塞がらなかった理由はここにあった。ベイル、イスコが監督の指示を無視した。あるいは監督がベイル、イスコの使いどころとタスクを間違えた。

 これに対してバルベルデ監督にはゲームプランを徹底させる力があった。ラフィーニャは駒となって右サイドを塞ぎ、アルトゥールは1列前に飛び出して忠実にプレスを掛けた。メッシの穴を全員で組織でカバーするという意識が徹底していた。監督の力量はプランの良し悪しだけでは決まらない。プランを遂行させる徹底力と権威、人心掌握術も監督の力である。この点すでに解任説が出ていたロペテギは選手の信頼を失っていたということなのかもしれない。

 後半レアル・マドリーがナッチョ、カセミロ、セルヒオ・ラモスの3バックにすると、試合は劇的に変わった。右サイドに張り出したルーカス・バスケスがジョルディ・アルバをストップし、CBが3人に増えたことでボール出しがスムースになり、クロースとモドリッチの2ボランチでポゼッションが安定し、イスコにその前で動く自由が与えられた。すべてがうまく回ったレアル・マドリーが圧倒的に攻勢となり、もし唯一何もしていなかったベイルが噛んでいれば逆転のチャンスすらあった。メッシ不在に奮起しハットトリックをしたルイス・スアレスとは対照的に、ロナウド不在で主役となるべきベイルは攻撃面でもほぼ貢献度ゼロで途中交代となった。

 ジダン、ロナウドとの決別、ロペテギ抜擢(その余波でロシアでスペイン代表沈没)、現有戦力に期待しての補強ゼロ、ベイル沈黙、屈辱的な5-1……。フロレンティーノ会長の策がことごとく外れ、レアル・マドリーはチームとしてだけではなくクラブとして危機に陥った。

文・木村 浩嗣 

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