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16/09/02【W杯最終予選】裏目に出た最終予選初戦での大抜擢

日本代表としての第一歩を記した大島(写真:Getty Images)

「ただ、それ以外に良い選手がいなかった」

 W杯予選には魔物がいる。そんな風に言われることもあるが、アジア最終予選の幕開けとなったUAE戦は、その言葉通りの試合となってしまった。2つのセットプレーから失点を喫し、疑惑の判定で認められるべきゴールが取り消されなかった試合について、ヴァヒッド・ハリルホジッチ監督は「心の底からガッカリしている。我々の実力が示された。これを受け入れるしかない」と振り返ったが、日本の戦い方にも気になることが少なくなかった。

 最終予選が現在のレギュレーションになって以降、初戦で負けたチームは、過去に一度もW杯に出場していないというデータがあるという。過去5度の予選だけで、データが少ないという指摘もあるかもしれないが、同時に初戦を落としたチームが、なかなか勢いに乗れないことを示しているともいえるだろう。その大事な初戦に、ハリルホジッチ監督は代表キャップ数ゼロのMF大島僚太を先発に大抜擢した。

 リオ五輪チームの司令塔を抜擢した理由について、指揮官は「(柏木)陽介と競争している中で、若い選手(の起用)を決断したが、こういう試合で恥ずかしさを見せるところがあった。それはチョイスした私の責任だ。スピードアップのところ、前へのパスでもう少し期待していた。ただ、彼もできる限りのことはやってくれたと思う」と話した。

 より慎重に戦うのであれば、MF山口蛍、MF遠藤航といった守備的な選手を配置する手もあった。しかし、何よりも結果が問われる最終予選の初戦で大島を起用したことについては、経験を積ませることで、彼の成長を促したいという意図もあったのだろう。大島は後半の早い時間帯に強烈なミドルシュートでゴールを狙い、五輪代表でもプレーしていたFW浅野拓磨にピンポイントのパスを送るなど、能力の片鱗を見せる場面もあった。しかし、テストマッチではない最終予選の初戦では、周囲の経験ある選手たちにも、そうした彼の長所を引き出す余裕はなかった。

 所属する川崎Fでは、ショートパスを中心にボールを散らしてゲームを組み立てる大島だが、この日はダブルボランチを組む長谷部誠が大島よりも前に行き、大島が長谷部のカバーをすることが多かった。同じく細かいボール回しを得意とする香川真司、清武弘嗣らと大島が高い位置で連動すれば、面白そうだったが、この戦い方をするのであれば、前述の山口や遠藤を起用する方が適任だっただろう。

 長谷部のカバーをすることになった大島は、結果的に2つの失点に絡むことになった。1失点目は自身のパスミスからカウンターに出るきっかけを相手に与えてしまったし、2失点目の場面ではPKになるファウルをした。この2失点目の場面は長谷部のパスミスがUAEのカウンターを呼ぶ起因となっており、そのツケを若い大島が払うことになった。「僕の個人的なミスからボールを奪われてPKになってしまった。経験ある選手としては、こういう試合で小さなミスは命取りになりますし、そういうミスを犯してしまい、本当にチームに迷惑を掛けてしまった。起こってしまったことは取り返すしかない」と、この試合で代表100キャップという節目を迎えた長谷部は反省して悔しがった。

 そして、ボランチを組んだ大島については「彼に思いっきりプレーしてもらいたいと思いましたし、これから良くしていかないといけない部分もあると思います」と話し、「若い選手たちが、伸び伸びプレーできるかどうかは、経験ある選手がどれだけ落ち着いてコントロールできるかにあると思うので、そういう面では、もう少し試合運びをうまくできたらよかった」と、振り返っている。

 W杯最終予選で、最も大切なのはW杯の出場権を勝ち取ることだ。同時に本大会で上位を狙えるだけの力を付けることも求められる。そのためにも若い才能の台頭は必要であり、それを指揮官は促して、ベテランはサポートしていかなければならない。「ビルドアップのときに、どこにいてほしいかとか、実戦で試さないと難しい部分がありました」と、試合後に話した大島が得た経験値は大きく、ハリルホジッチ監督も「彼に対しては、まだまだ楽観的だ。彼も伸びるし、我々も伸びる。大島は我々と初めて試合をした。私がチョイスしたのだ。彼を非難できないし、彼を勇気づけることが必要だ」と、2つの失点に絡んだ大島を庇った。大島が新たな一歩を踏み出せたことは、日本代表としてもポジティブなことだろう。

 とはいえ、この敗戦によって、若手に挑戦する場を与えるのが難しくなったのも事実だ。「なぜ、この選手を選んでしまったのか。自分でも疑問を抱いている。ただ、それ以外に良い選手がいなかった」と弁明するハリルホジッチ監督の下、日本は過去に1チームも成し遂げていない、初戦黒星からのW杯本戦出場を目指さなければならなくなった。現時点では、裏目に出てしまった指揮官の大島抜擢。この苦境をチームで乗り越え、「良い経験ができた」と振り返られるようにしなければならない。

《文=河合拓》

日本代表関連生放送予定

2018 FIFA ワールドカップロシア アジア最終予選

・日本 vs タイ
 9月6日(火) 夜8:55〜夜11:55(生中継 NHK BS1、テレビ朝日系)

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