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16/06/08【キリンカップ注目選手】フル出場も、FW浅野拓磨に残った悔しさ


先発出場し、持ち味を出した浅野(写真:Getty Images)

指揮官も評価した前半のプレー
 武器は示した。あとはゴールという結果を。

「やっぱり決定的なチャンスのところでパスを選択したっていうところで、今自分はすごく後悔していますし。あそこで結果入っていないですけど、その結果が入ったとしても入っていなかったとしてもシュートで終わっておきたかったって自分で思いますし、やっぱりそこの消極的な部分が出てしまった」

 FW浅野拓磨が振り返ったのは後半アディショナルタイムのシーンだ。MF金崎夢生のポストプレーからMF遠藤航が縦につなぎ、MF清武弘嗣が角度のあるワンタッチパスを裏に出したパスに反応し、ゴール前の右寄りでボールを受けた。そこからシュートに持ち込むかと思われた直後、浅野はゴール前にパスを出した。おそらく対象はインサイドに飛び込んでいたMF小林悠だが、手前のDFにカットされた。そのボールを清武が拾いシュートを放ったが、ゴールマウスの上を越えてしまった。

「ひとつ前のプレーでトラップしてシュートまでいった場面があったんですけど、それでDFに防がれて、横で夢生くんが待っていたのが一つ前にあって。それがちょっと頭に残っていたっていうのもあって、より確実な方を選んでしまった」

 ストライカーにとって判断は一瞬だけに、そうした残像は次のプレーに影響しやすいのだろう。しかし、浅野の内にある消極的な部分がこういう時に顔をのぞかせてしまったこともおそらく事実で、それは浅野本人が自覚していることだ。

「予選の時にも一回GKとの1対1で横パスを選択してゴールまで結びつかなかった場面がありましたけど、まったく同じミスをしているなと自分でも思いますし、あの経験が生かされていない」

「最後は絶対に自分が決めるってずっと思っていましたし。そのチャンスが来たら、絶対にシュートで終わろうっていうふうに自分の中ではずっと試合中は思っていましたけど、やっぱりあの場面の一瞬の判断でパスを選択してしまう」

 結果的に2−2に追い付けるチャンスをフイにしてしまったかもしれないプレーであり、メンバー発表の記者会見で「最終予選では1回か2回のチャンスで得点を取る選手を2人は見つけないといけない」と語ったバヒド・ハリルホジッチ監督の基準から考えてもストライカーとしての評価にも明らかにマイナスだろう。

 とはいえ、そうした悔しい経験もボスニア・ヘルツェゴビナを相手に先発フル出場を果たしたからこそ。常に相手ディフェンスの裏を狙う姿勢を押し出し、ゴール前のフィニッシュに絡んだ。25分には大型DFの合間に入り込み、左に流れた清武のクロスに合わせる。うまくミートすることはできなかったが、日本代表が目指す理想的な攻撃の形の1つだった。41分にはFW宇佐美貴史を起点に深い位置までえぐったDF長友佑都のクロスに合わせたが、今度はGKにセーブされた。

 後ろから浅野をサポートした右サイドバックのDF酒井高徳によれば、「ハリルホジッチ監督は『前半から浅野が良い動きをしているからもっと使え』って少しトーンの高い感じで激を入れた」という。相手の左サイドバックであるDFベキッチが最終ラインに残って前に出てこなかったこともあり、裏のスペースはそれほど空いていなかったが、それでも縦や斜めに動き出してボールを引き出そうとする浅野の存在は、ボスニア・ヘルツェゴビナにとって厄介だったはず。ただ、味方と合わせる部分ではまだまだ不十分であるのも確かだ。

「無闇やたらに裏に蹴ると良くないので、使うときにどう3人目でうまく使ったらいいのかというのを僕としては考えながらやりたかんですけど、僕のところでいまいちアイディアあるパスだったりができなかったかな、というのが少し浅野とやって出た課題かなと思います」

 そう語る酒井高は浅野にもっとどう出してほしいかアクションを出すように求めたという。それでも欧州組が加わったA代表として最初の試合で、持ち前のスピードを生かしながら、多くのフィニッシュに絡んだ浅野の能力を酒井高も高く評価している。

「あれだけプレーに関わっていることが多いというのは、その辺のインテリジェンスが少し高い選手なのかなと感じるし、自分のスピードがどこでどう生きるのかを理解しているのが彼の一番良いところなのかなと。あとは今日も前にどんどん行ってクロスに合わせるようなシーンがあったし、点を取りたい気持ちやにおいをうまく感じ取れている選手なのかなと」

 それだけに後半ロスタイムのチャンスでは「PKを蹴った勢いで打てって、雰囲気あった時にシュート打てって思ったというが、そうやって学んでいくものだと思うし、まずそこでパスの選択肢もあったってところを褒めたいと思うし、それで中がしっかり見えていたというのはポジティブなこと」と擁護した。

 周りからは多くのチャンスに絡んだように見えても、浅野は「最後はあの大きなチャンスがありましたけど、もっともっとつくりたかった」と振り返る。サンフレッチェ広島でスタメンのポジションを奪えているわけではない状況で、代表でフル出場できたことに関して「チャンスを与えてくれていると思っていますし、実際こうやってスタメンで使ってくれた」と浅野は語るが、その中で結果を出せなかったことを「自分の実力」と素直に認める。

「こうやってチームでなかなか結果を残していない中でも呼んでくれて、チャンスを与えてくれているので、やっぱり結果として何かを返していかないといけないなと思います。やっぱり日本のために戦っている以上、すべて出し切って監督に勝利というものを毎試合、毎試合届けられるような選手になっていかないといけない」

 そう語る浅野はリオ五輪に臨むU—23の主力候補でもある。そこでしっかり結果を出し、クラブでも結果を出し続けること。スピードという自分の武器を代表チームと監督にアピールすることはできた。あとはストライカーの価値をゴールという結果で証明すること。それこそが本当の戦力としてA代表に定着し、最終予選で大きな武器になっていくためにも大事なことになる。

《文=河治良幸》

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