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16/02/29【注目クラブ】攻守両面において組織の再整備に成功したローマ

前半戦で予想外の失速

 今シーズンのローマは酷かった。欧州屈指のターゲットマンであるエディン・ジェコや俊足FWモハメド・サラーを獲得し、下馬評では優勝候補の一角に数えられていたが、前半戦で予想外の失速。コッパ・イタリアではセリエBのクラブに敗れ、サポーターからは日々ブーイングを浴びせられ、クラブもファンからも愛想を尽かされたルディ・ガルシア監督は解任された。だが、セリエAで今一番注目に値するサッカーをしているのは、実は彼らだと言っておきたい。21節のユベントス戦(0-1で敗北)以降に6連勝を挙げ、奇跡の巻き返しを図っているのだ。

 

6年半ぶりに指揮官に復帰したスパレッティ監督
(写真:Getty Images)

名将の再就任

 その一つの要因は、名将の再就任にある。首脳陣がガルシアの後任として白羽の矢を立てたのは、2005年から4年間ローマを率いて好成績をもたらしたルチャーノ・スパレッティだ。当時キャリア最高潮にいたフランチェスコ・トッティをCFとして起用したゼロトップ・システムを駆使し、イタリアのみならず欧州にもセンセーションをもたらした戦術家が6年半ぶりに復帰。「チームを離れてからも、ローマから片時も目を離したことはなかった」と語ったスパレッティは、早速自分のカラーを出してチームの改革に着手した。ファンとメディアの過剰なプレッシャーの中でナーバスになっていた選手たちと話し合いを行い、戦術も変更する。技巧派のミラレム・ピャニッチをレジスタに転向させ、低い位置でのビルドアップからカウンターを図るスタイルに修正を図った。

 

冬の移籍でモナコからセリエに復帰したエル・シャラウィ
(写真:Getty Images)

冬の補強が大当たり

 そしてそこに来て、冬の補強で加入した新戦力がバッチリと噛み合った。まずは、モナコから移籍したステファン・エル・シャラウィ。ミランではマリオ・バロテッリとの相性の悪さや長引く故障で本領が発揮できず、新天地にも馴染めなかった彼は再起をかけてセリエA復帰を決断。走力を生かして左サイドから中央へと切り込み、シュートを狙うプレースタイルは戦術に早速フィットし、移籍後初戦のフロジノーネ戦でゴールを挙げて以降5試合で4ゴールだ。もう一人はディエゴ・ペロッティ。高速ドリブルを主体としたチャンスメイクを武器にジェノアではサイドアタッカーとして活躍していた彼だが、スパレッティ監督は彼を中央のトップ下ないしはニセ9としてチャンスメイクをさせる。その結果、単調だったローマの攻撃にバリエーションが生まれ、前線の破壊力は増した。

 こうしたモディファイの結果、チーム全体としても見違えるように安定した。ゴールから見放され批判の対象となっていたサラーやジェコにも得点が生まれる。組織が再整備された結果守備も向上。ダニエレ・デ・ロッシは時折CBも任されながら、後方のビルドアップと最終ラインの守備を引き締める。守備のとして批判されていた左サイドバックのリュカ・ディニュは、1月に加入したエルビン・ズカノビッチとの競争を通して安定感を取り戻している。攻守両面において組織の再整備に成功したローマは、遅ればせながら優勝候補の実力を発揮している。チームをたちまちのうちに整備し、意外なアイディアで選手の実力を引き出す様はさすがスパレッティ。試合ごとにどういう進化を遂げるのか、それに注目するだけでもきっと楽しめるだろう。

運命を自らの力で引き寄せることができるか

 もちろん最たる注目ポイントは、当然どこまで順位を上げるのかということだ。「それはウチの頑張りだけでなく上位の成績にもよる」とスパレッティ監督は慎重だったが、実は運命を自らの力で引き寄せられる立場にある。28節は早速、フィオレンティーナとの直接対決。30節にはさらにインテルと直接対決を迎え、そして35節には天王山ともいうべきナポリとの一戦がある。ナポリとフィオレンティーナは前半戦のようなペースを維持できなくなっており、インテルに至っては自由落下の真っ最中。そんな彼らを後方でのビルドアップで前方に引き出し、エル・シャラウィやサラーのスピードを活かしたカウンターで仕留めることができれば、順位を覆すことは十分可能だ。そしてラッキーなことに、ローマはこれらの試合をすべてホームで戦うことができる。一時期は完全に冷めていたオリンピコの空気は、このところの巻き返しで再び熱を帯びている。クルバ・スッドの熱い声援を武器にできる事は、ライバルに対しこの上ないアドバンテージとなるはずである。

 ただそんな彼らにも、最後のネックがある。「試合に出たい。自分にもリスペクトを」と地元メディアに放言し、戦力外措置にされた主将トッティの問題をどう処理するかだ。選手たちにとっても精神的なシンボルで、ローマのみならず全国的にも注目を集める存在。かといって衰えは否めないところで、果たしてスパレッティはどう舵をとって行くのだろうか。この後半戦、ピッチの内外においてローマから目が離せない。

《取材・文 神尾光臣》

 

 

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