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15/11/04【長友佑都】ローマとの大一番で証明した実力


サラーを相手にもスピードで勝利(写真=Getty Images)


強豪相手に巡って来たチャンス 

 31日ローマ戦の開始直前、プレスルームではどよめきが走っていた。「どういうことだ?」メンバー表を手にした地元記者たちは口々に語る。発表されたインテルのスターディングイレブンにはこれまでスタメンを守り続けていたFWマウロ・イカルディの名がなかった。そしてサイドバック。右は長らく出場から遠ざかっていたダニーロ・ダンブロージオが、そしてパレルモ戦から2試合ぶりの先発出場となる長友佑都は右SBではなく本職の左SBだった。選手たちに知らされたのは「ちょうど19時になるとき」(ダンブロージオ)、つまり試合前のミーティングだった。

 ロベルト・マンチーニ監督の意図するところは予想できた。攻撃的なローマに対して組織守備で対抗。前線のプレスに参加せず、指揮官が不満を漏らしていたイカルディを外したのもその理由だろう。そしてSBの人選はスピード重視。今シーズンここまで25点を奪ったローマの攻撃陣には、FWジェルビーニョにFWモハメド・サラーという超高速FWが2人もいる。スピードに難のあるDFダビデ・サントンやDFファン・ジェズスを外し、長友やダンブロージオを選択したのはそのためだ。パレルモ戦の好調で早晩長友にチャンスが訪れるのは予想できたが、あとはどれだけ監督の期待に応えるか。「120%を出して練習で努力していた」という彼は見事なパフォーマンスを見せた。

 ローマのウイングは試合中に入れ替わるが、まず長友はジェルビーニョと対峙。裏のスペースを狙おうとする相手にピタリと張り付き、エリア内にドリブルで侵入されてもカバーに入ってクリアする。その後、右サイドはサラーにスイッチするが、ここでも良好なカバーリングで相手を裏へと行かせなかった。サイドにはインテルでチームメイトだったDFマイコンに加え、インサイドハーフも侵入し数的優位をつくられる。しかし、長友自身の守備に破綻なし。味方のプレスもよく効き、サイドのカバーに集中できた彼は冷静沈着なプレイで前半を終えた。

 

冴え渡った日本代表DFの守備

 そして後半、長友の守備はさらに冴える。まずは49分と50分、ジェルビーニョとの1対1だ。相手の右足に視点を集中しつつ、絶妙な間合いを保ちながらドリブル突破を中断させる。繊細なタッチを持つジェルビーニョはフェイントで右に左に揺さぶりを掛けるが、ここで生きるのが鍛えた体幹の強さだ。急激な切り返しの連続にも粘り強くついて行き、最終的にはCKに逃れた。

 さらに今度は、サラーとのスピード勝負にも勝った。58分、カウンターから前線に飛び出した彼に対し、長友はいち早く反応。振り切られるどころか相手の前に出てコースを切り、GKサミル・ハンダノビッチにボールを取らせた。15分にもサラーは裏のスペースへ走るが、長友は急激なダッシュで回りこむ。そしてエリア内で体を寄せ、コースを限定した上でボールに触ってサラーに当てさせ、GKにクリアせた。

 その後も絶妙なカバーで裏のスペースの侵入を許さなかった長友は、73分、ジェルビーニョへのパスを絶妙な読みでインターセプトし前に進む。このボールをMFミラレム・ピャニッチが手を使って止めてしまい、2枚目のイエローで退場。俊足ウイング2名を封じたのみならず、結果的には攻撃の中枢まで退場に追い込むなど、少々出来過ぎなくらいに長友の守備は機能した。

「うちには強力で速い選手がいる」。試合後、マンチーニ監督はサプライズ起用に胸を張った。それにしても長友は、試合から遠ざかっている状況でよくもこれだけのコンディションをつくり上げていたものだ。練習をするにしてもモチベーションを保つのは大変だったのではないかと質問をすると、「逆にモチベーションは上がってますよ」と返事が来る。

「試合に出続けると練習があまりできないんで、自分の長所と短所をしっかりと見つめ直して、それを徹底的に練習から120%出してやっていた」。

 確かにこの日の粘り強さには、自らのストロングポイントを見つめ直した様子が現れていた。ピンチをチャンスにという発想で、現状を再評価できたからこその復調。「まだまだアピールしなければならない」という長友は、さらなる逆襲へ挑む。

《文=神尾光臣》

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