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15/10/28長友佑都、逆襲へ向けた第一歩

ようやく出場権を与えられた長友(写真=Getty Images)


実ったミラン戦でのアピール

 21日、ミランと行われた親善試合ベルルスコーニ杯。左SBとして先発したDF長友佑都は、前半のみの出場でベンチに下がった。夏の間は戦力外扱いで、出場も第2節カルピ戦の10分間のみ。1月の移籍も濃厚視される厳しい立場なら、こういう消化試合でこそ長く使われてしかるべきだろう。しかも前半でお役御免となったメンバーは、FWロドリゴ・パラシオにMFジョフレー・コンドグビア、DFアレックス・テレスといった今シーズンの”準主力”だ。「これから日程もクロスするのでターンオーバーも行使する」とロベルト・マンチーニ監督は語っていたが、ひょっとしたら次の試合で使うことも意識しているのではと予感させた。実際、プレーは悪くなかった。ミランの右ウイングであるFWアレッシオ・チェルチに張り付いてボールを奪い、30分から4-3-3の右インサイドMFに移っても精力的にプレスに参加。攻撃参加から戻るなりMF本田圭佑からボールを奪うシーンもあり、コンディションは良さそうだった。


 そして彼は、24日のパレルモ戦で本当に使われることとなった。しかも先発。試合出場もほぼ2カ月ぶりという境遇にもかかわらず、スピードにも乗れて気持ちの入ったプレーを見せた。


 ポジションは右SB。右のサイドハーフに入ったMFフレディ・グアリンのケアが希薄で対面の左WBが上がり、また自らの背後のスペースも戦術で狙われるやや苦しい状況だ。ところどころチェックに失敗し、対面の相手を逃すこともあったが、味方が無事カバー。そして時間の経過とともに、自身のプレーも落ち着く。鋭いインターセプトからボールを奪取し、1対1を仕掛けられても勝つ。そうして少しずつ対面を押し込み、高いポジションを取るようになる。前半が終わる頃には、サイドの主導権を奪い返していた。


 後半に入りマンチーニ監督は、俊足のMFジョナタン・ビアビアニーを長友の前に投入。これで決定的に楽になった長友は、次々とアグレッシブなサイドアタックを敢行した。チームがMFイバン・ペリシッチのゴールで先制した直後の18分、高い位置から右サイドでボールを奪い、そのままドリブルでボールを運ぶ。そして味方の上がりを待ちつつ、さらにサイドを突破して右クロスを送る。ファーからペリシッチが突っ込んでくるが、GKがギリギリでセーブした。26分にもFWステバン・ヨベティッチのスルーパスに反応して裏に飛び出し、鋭いクロスを中央に出していた。

好パフォーマンスに指揮官は再評価

 久々の出場だったからか試合終盤にはさすがにスピードが落ち、攻撃参加の後でも素早く戻れなくなっていた。しかしながら姿勢は終始アグレッシブで、79分にDFジェイソン・ムリージョが退場してからも積極的にサイドを押し込んでいた。アグレッシブな上下動は終始光っていたし、翌朝の地元紙の評価が芳しくなかったのが正直解せないほどだった。

 何より素晴らしかったのは、この境遇にあって長友が腐っていなかったことだ。いかにモチベーションを失わずに、陰で頑張ってコンディションをつくっていたかはプレーを見れば伝わる。「雑草魂」とよく口にしていたが、改めて人間としての”強さ”を思い知らされた。TV解説を務めていた元インテルDFのダニエレ・アダニ氏も「なんて試合をしているんだ。出場がなくて放出確実とまで報道されていたのに、試合に出るための準備をちゃんとしていた。これは重要なことだ」とベタ誉めだったという。

 この日の起用は主力のDFダビデ・サントンを休ませるためでもあっただろうし、すぐに定位置奪取とはいかないかもしれない。しかし少なくとも右SBの2番手にはつけたし、ベンチを甘んじて受け入れた選手が頑張れば監督にも嬉しいはず。現にマンチーニ監督は「あの試合によって長友にはまたエネルギーが注入されたようだ。調子は良いし、フィジカル上の問題も特にない。(プレシーズンやカルピ戦などで)出来が良くなかったのは長いことプレーしていなかったためだ」と再評価を口にしている。この世界では、1試合で運命が劇的に変わることも多々ある。ここから逆襲が始まると、私自身は本気で期待している。

《文=神尾光臣》

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