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15/10/07吉田麻也:一つのミスで変わった風向き


開幕直後は先発に定着していた吉田(写真=Getty Images)

 

一つのミスで変わった風向き

 サウサンプトンの吉田麻也は、プレミアリーグ4季目となる今シーズンを幸先良くスタートした。

 ロナルド・クーマン監督の信頼を掴み、8試合連続で公式戦(※欧州リーグ予選を含む)に先発。本職のCBに加え、ユーティリティ性を買われてSBとしても出場し、最終ラインで地盤をガッチリ固めつつあった。

 イングランドで経験を積んでプレーに落ち着きが生まれ、20歳の若き左SBマット・ターゲットへ積極的に指示を出すなど、リーダーとして風格も漂っていた。堅実なプレーが評価されるイングランドのCB像に近づこうと、シンプルで力強い守備も板についてきた。順風満帆──。充実の1年になりそうな雰囲気はたしかにあった。

 しかし、たった一つのミスで風向きが大きく変わってしまう。ホームにマンチェスター・Uを迎えた第6節で右SBとして先発。しかし、GKへの不用意なバックパスを奪われ、失点に直結するミスを犯してしまった。チームは2−3で敗戦。クーマン監督は「サッカーにミスはつきもの」と擁護しながらも、「ああいうミスが出てしまうと勝利に結びつけるのは難しい」「ありえないミス」と厳しい言葉を並べた。

 試合後、ミックスゾーンに現れた吉田は、険しい表情で語り始めた。

「自分の仕事は(サイドで対峙したメンフィス)デパイをしっかり止めることだったので、そこに関しては悪くなかったと思うが、もちろん失点もしているし、ミスもありました。まあ、残念です。残りのシーズンで失った勝ち点3を、自分のミスで失った勝ち点3を取り返せるように頑張ります」

 囲み取材を手短に終えると、表情を崩さぬままスタジアムを後にした。2012年夏にサウサンプトンに入団して以来、筆者は吉田の取材を続けているが、あそこまで厳しい顔を見せたのは初めてのことだった。それほど、日本代表DFは「ミスの重さ」と「自分への怒り」を感じていたのだろう。

「集中力」と「詰めの甘さ」。ことあるごとに、吉田はこの2つの課題を口にしてきた。昨シーズン終盤、37節のアストンビラ戦でもこう語っている。

「もう一皮むけないと。詰めの甘さがある。このリーグでは詰めの甘さやワンプレーで負けることがある。集中力や詰めの甘さを改善していけば、もっとよい結果を出せると思う。そうしていかないと、ここでは生き残っていけない」

 90分を通して、集中力を継続できるか。課題を克服すれば、次のステップに進めるという感触もある。だからこその「怒り」であり、「厳しい表情」だったのだろう。吉田の守備力を評価してSBに起用した、クーマン監督の期待を裏切ったという気持ちも強かったに違いない。

 


信頼を取り戻すために、与えられたチャンスを生かせるか(写真=Getty Images)

定位置再確保へ、続くアピール
 あの一戦以来、吉田に先発の機会は与えられていない。直近3試合はCBに新戦力のフィルジル・ファン・ダイクが入り、右SBにも今夏に加入したセドリック・ソアレスが収まった。一方の吉田は、ベンチから戦況を見守る日々が続いている。

 だが、指揮官の信頼が消え失せていないのは、マンチェスター・U戦の直後に行われたMKドンズ(英2部)とのリーグ杯で感じることができた。

 試合は、6−0でサウサンプトンが一方的にリード。守備固めをする必要がないほど力の差を見せつけていたが、クーマン監督はCBのファン・ダイクに代え、79分から吉田を途中交代で起用したのである。ミスをした3日後の試合だっただけに、日本代表DFとしてはクーマン監督の采配が心強く、そして有り難かったことだろう。

 もちろん、この経験を糧にできるかどうかは、今後の奮闘次第である。新戦力のファン・ダイク、そしてセドリックとも盤石の守備を見せているとは言い難く、吉田にも付け入る隙はある。

 与えられた出番できっちりと仕事をこなし、安定したパフォーマンスを継続する。再浮上のきっかけを掴み、もう一度、定位置奪取に向けてアピールしていきたい。

《取材・文 田嶋コウスケ》

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