マッチレポート

【EURO2016 ドイツ代表総括】ケガに苦しめられながらも、さすがの4強進出


チャンスの数は多かったが、決定力を欠いたドイツ(写真:Getty Images)


残されたストライカー不足という課題

 世界王者ドイツにとって今大会はケガとの戦いでもあった。本大会直前には主力のFWマルコ・ロイスが内転筋の負傷でメンバーから外れ、度重なる負傷でシーズン後半はほとんど出場機会のなかった主将MFバスティアン・シュバインシュタイガーは、初戦のウクライナ戦で復帰を果たしたもののなかなかコンディションは上がらず。大会前にケガから復帰したMFサミ・ケディラとチーム唯一の正統派ストライカーであるFWマリオ・ゴメスも準々決勝イタリア戦で負傷交代を強いられ、準決勝フランス戦の出場はベンチで見守ることに。さらにそのフランス戦ではDFジェローム・ボアテングまでもがケガでピッチを去ることになってしまった。DFマッツ・フンメルスは大会中に復帰したものの、準決勝は累積警告で出場停止。フランス戦を迎えた時点でドイツは満身創痍だった。

 そんな状況でもベスト4進出を果たしたのはさすがと言える。これだけの負傷者がでながらも厚い選手層でカバーし、DFフィリップ・ラームの後継者探しに苦労していた右SBには大会直前に代表デビューを飾ったばかりのDFジョシュア・キミッヒが台頭。就任10年目を迎えたヨアヒム・レーブ監督がつくり上げたチームの完成度は大会屈指だった。初戦のウクライナ戦では先制後に苦しい時間帯を迎えたり、第2戦のポーランド戦では有効な攻め手を見出せずにスコアレスドローに終わったりと不安な要素はあったものの、第3戦北アイルランド戦とラウンド16スロバキア戦も含め4試合無失点という安定感で大会を勝ち進んでいった。

 最初の天王山となったイタリア戦で、レーブ監督は今大会初めてとなる3バックを選択した。イタリアの2トップに対応するためというのがその理由で、ドイツ国内では「守備的な戦術」という批判も出たが、3月に行われたイタリアとの親善試合で成功したシステムであり、実際この日も非常によく機能していた。MEメスト・エジルのゴールで先制しながらボアテングのハンドで追いつかれたが、PK戦の末に勝利を収め、史上初めてW杯・EUROでイタリアを破ってみせた。

 準決勝フランス戦では、主将シュバインシュタイガーがハンドで与えたPKが試合を分けることになってしまったが、ドイツもボールを支配しながら最後までゴールが奪えなかった。レーブ監督は大会直前で怪我のロイスに加えて、MFカリム・ベララビ、MFビリー・ブラントのウインガーを3人外し、サイドの攻略はSBに託された。パスワークで崩せた格下相手との対戦では問題なかったが、1対1に晒されたイタリア、フランス戦ではサイド突破が封じられてしまった。ゴール前を固める相手に対しては中央突破も限界があり、頼みのセットプレーも初戦のDFシュコドラン・ムスタフィだけだった。

 それでもチャンスはつくれていただけに、決定力に問題があったのは間違いない。今大会のドイツは108本のシュートを放ち、7つのゴールを挙げたが、1ゴールあたりに要したシュートは15.4本でこれはベスト4進出国では最悪のレートだ。この決定力不足は今大会に始まったことではなく、予選の時から問題視されていたこと。

 近年のドイツはストライカー不在に悩まされ、ブラジルW杯ではMFマリオ・ゲッツェを偽9番に据えることで問題を解決した。今大会は好調のゴメスがファーストチョイスになったが、代役までは用意しておらず。フランス戦では今大会ノーゴールに終わり絶不調だったFWトーマス・ミュラーを1トップに据えたが、これは以前にもテストしうまく機能しなかったもの。ストライカーをメンバーからから外し続けてきたことのツケが回ってきた形だ。ストライカーなしでも十分に優勝を狙えるだけの力があることを今大会も証明してみせたが、いよいよ正面から問題に向き合う時がやってきたようだ。

《文=山口裕平》

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