マッチレポート

【EURO2016 イングランド代表総括】中途半端なパフォーマンスで屈辱にまみれた母国

まさかのベスト16敗退に肩を落とす選手たち(写真:Getty Images)

一貫性を欠いたホジソン監督の采配

「959試合目となった代表戦で、イングランドはどん底に突き落とされた。1950年のW杯で米国に敗れた時より大きな屈辱であり、比較できるものなど何もない。144年の歴史を持つイングランド代表史上、最大の屈辱だ──」

 こう記したのは、英紙『タイムズ』で主筆を務めるヘンリー・ウィンター氏である。開幕前の戦前予想で「イングランドは良くてもベスト8止まり。準々決勝でイタリアに敗れる」と自国の苦戦を記していた同氏だが、16強で敗退、しかも人口わずか33万人の小国アイスランドに敗れたことで、舌鋒鋭く批判した。(ちなみに、開幕前にイングランドの優勝を予想していた英メディアは皆無だった。4強進出すら少数派で、大半が「8強止まり」と記していた)

 ウィンター氏は「イングランドのプレーはまるで読みやすかった。何度も似たようなパスを展開し、アイスランドの手の中で遊ばれていた」と続ける。選手採点欄でも、出場した全員に「採点0」(10点満点)という厳しい評価をつけるなど、サッカーの母国は、まさかの敗戦に最大級の衝撃と屈辱を受けたのである。

 しかしながら、イングランドが抱えていた問題は、このアイスランド戦で突如噴出したものではない。英公共放送の『BBC』が「目に見えて準備不足」、元イングランド代表のアラン・シアラーが「ベストの布陣と人選を見出せなかった。一体感がない」と総括したように、大会全体を通して「いかに戦うか」といった基本戦術すら見えてこなかった。攻撃を仕掛けてもどこか一本調子。かと言って、堅牢な守備ブロックを敷くわけでもない──。グループリーグ初戦となったロシア戦から先述のアイスランド戦まで、イングランドは中途半端なパフォーマンスを繰り返した。

 10戦全勝で終えた予選を振り返っても、ロイ・ホジソン監督の場当たり的な選手起用や戦術が目についた。1年の長丁場となる予選で、調子の良い選手を優先して起用するのは、チームの幅を広げる意味では「良し」と評価できる。しかし、そこで得た経験や収穫点を本大会で生かせなければ、単に一貫性がないだけだ。2012年の欧州選手権の開幕直前に代表監督に就任した同監督だが、この4年間を振り返ると、在任期間を有効活用したとは言い難い。

 戦い方にも同じことが言える。就任当初はポゼッションサッカーを志していたが、いつの間にか縦に速いサッカーへ舵を切ったあたりに、采配にブレが見えた。

 しかも、識者の間で好意的に捉えられていたイングランドの「トッテナム化」も──ハリー・ケーンとデル・アリ、エリック・ダイアー、カイル・ウォーカー、ダニー・ローズの5選手を先発起用した──本大会直前のトルコ戦とポルトガル戦でテストしたのみ。昨季好調だったトッテナムの連携と勢いを代表で活かしたかったのだろうが、付け焼き刃の印象はどうしても拭えない。

 明らかに調子を落としていたケーンとラヒーム・スターリングの先発起用にこだわったり、ロシア戦で中盤を支えていたウェイン・ルーニーを途中交代で引っ込めたりと、ひとつひとつの采配にも説得力がなかった。

「アイスランドに勝利したとしても、準々決勝で対戦したフランス戦で、イングランドは何ができたのか?」(英紙『ガーディアン』)。そんな悲観的で後ろ向きな声が聞こえてくるほど、今回のイングランド代表は脆く、そして一体感がなかった。

 一皮むけるには、就任が噂されるアーセン・ヴェンゲル監督やユルゲン・クリンスマン監督といった「ブレない信念」や「カリスマ性」を持った名将の起用が不可欠だろう。同じく招聘が噂されるサム・アラダイス監督のような前時代的な英国人の起用に踏み切れば、ホジソン政権と同じ轍を踏むとしか思えないのだが…。

《文=田嶋コウスケ》

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