マッチレポート

【EURO2016 イタリア代表総括】評価を高めた『史上最もタレントのいないアッズーリ』

PK戦の末、ドイツに敗れたが、印象に残る戦いぶりを見せた(写真:Getty Images)

際立ったチームの一体感

 敗退直後のテレビインタビューで、DFアンドレア・バルザーリは男泣きしながらこう言った。「僕らがやってきた素晴らしいすべては、何も残らないだろう。残るのは落胆だけだ。誰もこのチームのことを覚えていかないだろう」。この言葉が、今大会のイタリア代表を表しているかもしれない。「健闘したが、勝てなかった」ということだ。

 前評判は良くなかった。むしろ、低かった。近年、衰退著しいと言われるイタリアサッカー。さらに数少ないワールドクラスのMFマルコ・ベッラッティやMFクラウディオ・マルキージオを負傷で欠き、アメリカでの新生活を選んだ稀代の天才アンドレア・ピルロも招集されなかった。「史上最もタレントのいないアッズーリ」。そんな風に揶揄する声もあった。

 数少ない希望は、バルザーリとDFレオナルド・ボヌッチ、DFジョルジョ・キエッリーニの「BBCトリオ」に、絶対の守護神GKジャンルイジ・ブッフォンを加えた、イタリア王者ユベントスが誇る鉄壁のカルテットだ。実際、開幕してからの守備陣のパフォーマンスは期待通りだったが、中盤から前線にかけての面々は、期待以上のプレーを披露した。

 まずはグループステージ初戦、イタリアは優勝候補の一角だったベルギーを撃破する。個のクオリティーで勝る相手に組織で対抗し、世界ランク2位に思うようなプレーをさせず、伏兵MFエマヌエレ・ジャッケリーニの先制点と終了間際のFWグラツィアーノ・ペッレのダメ押し弾で“金星”を挙げた。

 見事な船出で波に乗ったイタリアは、続くスウェーデン戦でも得意の守備でFWズラタン・イブラヒモビッチを封じ込めると、終盤にFWエデルが値千金の決勝点。2014年のブラジル・ワールドカップでは決勝トーナメントに進むことすらできなかったが、今大会は開幕2連勝で決勝トーナメント進出を果たした。

“消化試合”での弱さは変わらず、主力を休ませた最終節アイルランド戦は初失点を喫して敗れた。だが、下馬評を覆してのグループステージ首位通過に、世間の評価はうなぎのぼり。「タレントのいないアッズーリ」は、「大会屈指の組織力を持つチーム」に変貌を遂げたのである。

 その評価をさらに高めたのが、2連覇中だった王者スペインとの決勝トーナメント1回戦だ。前半からスペインとポゼッションやパス本数で五分に渡り合い、走行量で上回って試合を支配。エデルのFKのこぼれ球をキエッリーニが押し込んで先制する。

 後半はビハインドを背負ったスペインにポゼッションを譲るも、組織的な守備で王者に得点機会を与えず、アディショナルタイムにペッレがダメ押し弾。完勝と言える内容でのベスト8進出で、「スペインの一時代を終わらせた」と絶賛された。

 迎えた準々決勝。相手はイタリアが主要大会で一度も負けたことのない、だが2年前のワールドカップを制している世界王者ドイツだ。当然、ここでも下馬評ではイタリアが不利とされていた。

 ドイツがイタリアに合わせ、3-5-2のシステムを採用したことでこう着した展開となった試合は、65分にMFメスト・エジルの先制点でドイツが均衡を破る。だが、イタリアも苦しい展開ながら78分、DFジェローム・ボアテングのハンドで得たPKをボヌッチが決めて同点に追いつく。ワンチャンスを物にする形で延長戦、そしてPK戦へと勝負を持ち込んだ。

 運命のPK戦、3番手まで終え、イタリアは2-1とリード。4番手に登場したのは、今大会で評価を高めたペッレだった。だが、GKマヌエル・ノイアーを相手にパネンカを宣言するような仕草を見せたエースは、PKを左に外してしまう。直後に追いつかれ、イタリアは逃げ切る好機を逸した。

 両軍とも最初の5人中3人が失敗するという緊張感に包まれたPK戦は、9番手までもつれた末に、DFマッテオ・ダルミアンが失敗し、DFヨナス・ヘクターに決められたイタリアが、5-6で敗れた。

 こうして惜しくも準決勝進出を逃したイタリアだが、大会を通じて評価を高めることには成功した。高い水準の組織力、得意の堅固なディフェンス、何よりもゴールを決めた選手を真っ先にベンチメンバーが祝う一体感。今大会有数の「チーム」だったことは間違いない。バルザーリはインタビューの最後に、「(メンバーとずっと)一緒にいたかった」と述べている。

 敗退から一夜明け、ラスト会見に臨んだアントニオ・コンテ監督には、報道陣から惜しみない拍手が送られた。メディアもまた、指揮官によってサッカー大国イタリアが誇りを取り戻し、国民が代表チームを誇るようになったことを称賛したのだ。

 だが、指揮官は少し照れくさそうに笑顔を見せてから、「昨日以上に感情的になっている。終わったんだと実感するからだ。とても残念だよ」と悔しさをにじませた。

 イタリアの健闘ぶりには、多くの賛辞が寄せられた。おそらくファンは、その活躍を忘れないと言うだろう。だが、サッカーの世界は酷なものだ。結果を残さなければ、記憶が徐々に薄れていくのも、残念ながら一つの真理である。だからこそ、バルザーリやコンテ監督は前述のようにコメントした。

 今大会のアッズーリへの熱が、一過性のものになってしまうのかどうかは、今後の彼ら次第だ。

《文=J:COMサッカー編集部》

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