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17/07/21【Jリーグコラム】“お金だけではない価値”と“Jリーグの持っている力”

(写真:Getty Images)

懸念された資金面の問題もクリア

 日本時間14日朝、東京Vが続けていたフランチェスコ・トッティとの移籍交渉が終焉を迎えた。日本への移籍の可能性をトッティ本人が意識してから1カ月超、ほかには米国のクラブからのオファーもあったが、最終的には東京Vでの現役続行と、現役を引退してローマのフロント入りという2択に。トッティ本人も悩んだ結果、ローマからの提案を受け入れた形で、東京V側に正式な断りの連絡が入った。

 降って湧いたかのような今回の一件、トッティ側との交渉にあたっていた仲介人の良藤辰夫氏に、一連の話を聞いた。

 ことの始まりは4月下旬だった。3月より、ローマのルチアーノ・スパレッティ監督とトッティとの関係が悪化。その後ローマを退団する流れになったが、トッティ本人は「自分はローマの人間ではなく、フットボールプレーヤーなんだ」と現役続行の意志を示した。そして4月の終わりに、イタリアの有力代理人とも親交のある良藤氏と、トッティ側が最初に接触。「推薦できるチームはあるか」という投げかけに対し、良藤氏はJリーグの現状を含めて各チームを紹介。数あるチームの中から、トッティ本人が一番興味を持ったのが東京Vだった。その際、トッティ周辺の人物たちは「J2のチームだが?」と何度も確認したという。ただ、日本で最初に海外の血を入れたプロクラブである東京Vには歴史があり、Jリーグ初年度王者であること。近年は苦しい経営状態になってJ2にいるものの、再興し東京にサッカー文化を根づかせたい理念を持っていることなどについて、トッティがいたく共感。中国や韓国のクラブはもともと視野に入っておらず、『キャプテン翼』を幼少期から好きだったことなど日本への愛着があったこと、さらには「ローマと東京の掛け橋になりたい」と都市面でのつながりにも考えが至り、そこからは条件面の交渉に移行した。

 そこで、資金面の問題が発生した。当然だ。トッティの年俸は、東京V所属の選手たちに比べるとかなりの高額である。ただ、羽生英之社長が迅速に、「新規にヴェルディのプロジェクトを応援したい」という企業を束ねて、交渉できる状況を整えた。これには良藤氏も「ヴェルディの底力を感じた」と羽生社長への謝意を強調する。

加熱したイタリアでの移籍報道

 6月、東京V側の提示が行われたことで交渉は本格化した。羽生社長が出した熱を持ったレターにトッティが感銘を受けるなど、好印象を与えていたのは確かだ。一方で、トッティ周辺の状況に変化もあった。確執のあったスパレッティ監督の退任だ。また、東京Vとの交渉が明るみに出ると、イタリアで報道が加熱。これによりトッティ本人に対して、政治家、芸能人らありとあらゆる人物から“引き止め”のための連絡がひっきりなしに入るようになった。

 そして、回答までが長引いた。トッティは一切の連絡手段を断って、一人海外に飛んで身の振り方を考えるなど、悩み抜いたという。しかし最後は、ローマに残ることを決めた。“ローマで骨を埋めるトッティ”という、周りの理想像を選択した。

 トッティの家族が、どうしてもローマから離れられないという事情も大きかった。イタリアには単身赴任の文化はあまりなく、小学生の長男・長女、そして幼い次女の存在も移住の決断に迷う一因だった。それでも、トッティの本心としてはプレーしたい意向があったことはうかがえる。

実力者たちが視野に入れる日本行き

 今回、残念だったのは、日本側でトッティを求める声を高められなかったことだ。イタリアでは日々『ヴェルディ』の名が報道され、ローマ市民の第一話題はトッティの去就となった。ローマのレストランで交わされている会話は、ほとんどがトッティの話だったという。一方、日本では懐疑的な声も大きかった。いちメディアとして、その点は責任を感じる部分である。トッティの行き先について、より大きなムーブメントが起きたのはイタリアのほうで、そのことも決断の一端になっていたと感じるからだ。

 トッティがJリーグ入りに興味を抱いたように、“お金だけではない価値”がJリーグにあることは確か。神戸にルーカス・ポドルスキが加入したことが証明するように、世界的な大物をはじめとする実力者たちが日本への移籍を視野に入れている。良藤氏の下にもそうした接触が多数あるという。トッティの件を検証するとともに、もっと“Jリーグの持っている力”について各クラブが、そしてファンが再確認する必要があるように思う。

文・田中 直希

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