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17/03/21【日本代表】サムライブルーの攻撃陣に新たな風を吹かそうとする久保裕也

新天地で早くも結果を出し始めている久保(写真:Getty Images)

世界中で話題となったスーパーゴール

 衝撃的なドリブルゴールが、一気にこの男の注目度を上げた。

 3月12日に行われたベルギーリーグ、ヘント対メヘレン戦。この冬、クラブ史上最高額の4億2千万円の移籍金でヘントに加入した、日本代表FW久保裕也。ハーフウェーライン付近から前方を向いてドリブルを開始すると、寄せてくるDFの波をスルスルとくぐり抜けていく。最後は素早いダブルタッチで華麗に敵をかわして、GKの脇を抜けるシュートをゴールに流し込んでみせた。

 この美しい得点に、ベルギー国内や日本だけでなく、世界中のサッカーファンが湧いた。加入してまだ2カ月足らず。移籍後初のリーグ戦出場でいきなり直接FKを叩き込むなど、新天地での久保は知名度も存在感も順調に上昇しているのである。

 スイス・ヤングボーイズでプレーし、4シーズン。「だいぶ長すぎますね。これも結果の世界なので、自分が移籍したいからすぐにできるのではないですけど」と、久保は吐露していたことがあった。

 当初の目標としては、スイスをステップアップにして、より高いレベルのリーグへ。久保の理想は、イタリア挑戦。自身の代理人がイタリア人であることから、普段からセリエAの情報にも多く触れてきた。さらにヤングボーイズ時代に、EL(ヨーロッパリーグ)でナポリと対戦。「強かったけど、どこかでやれるんじゃないかなという手応えもあった」と振り返っていた。数年前からはイタリア語も学び始めていたほどだった。

 それがこの冬、一転してベルギーへの移籍を選択した。何より一番の理由は、「新たな環境で、新たな刺激が必要だったから」だという。

 ベルギーリーグはスイスリーグよりもレベルは少し格上となる。ただ、当然久保が目指していたセリエAなどの欧州主要リーグに比べれば、力は劣る。

 ただそれ以上に、いまの環境から移籍することの必要性を感じたようだ。その一番の理由が、スイスでの成長の限界だった。 

途中交代したサウジアラビア戦以来の代表戦に臨む(写真:Getty Images)

久保がベルギーリーグに求めたもの

 ヤングボーイズでは、攻撃的なポジションを複数任されることが多かった。2トップの一画、トップ下、左右サイドと、器用な選手とみなされることが多い日本人選手特有の使われ方をされていた。

 久保は強い危機感を覚えていた。

「器用貧乏なら、結局そのうち強烈な選手が出てきたらメンバーから外されると思うんです。でも、点を取っていれば、数字を残せば、絶対に代えられない。だから器用貧乏で終わることだけはイヤなんです。何より、僕はポジションの型というものにあまり自分をハメたくない。サイドハーフはこうだとか、FWだったら現代サッカーなら守備を多く求められたり、とか。そういう枠にハマった選手ではなくて、僕はこっち(欧州)ではある意味ずる賢い選手でいたい。日本人だって、こういうタイプの選手もいるんだぞってね」

 スイスでは土地にも慣れ、仲間のプレーや癖もすべて理解できていた。ただ、一方で器用に使われる自分の立場も、大きくは変わらなかった。何とか現状を打開しようと試合ごと、練習ごとにさまざまなトライをしてきたものの、チームの中で染み付いた久保のイメージはなかなか剥がすことができなかった。

 そんなタイミングで飛び込んできた、ベルギーからのオファー。器用貧乏ではない、より粒の立った存在へ――。もう一度自分の力量を試し、誇示するべく、久保は新天地へと向かったのだった。

「中盤やサイドで起用されると、もちろん試合の中でチャンスメイクをする側に回ることもある。器用な選手だったら、攻撃の組み立てにも参加できるだろうと思われるし。でも、それができる選手だとしても、僕はやっぱりラストパスを出す側ではなくて、受ける側にこだわりたい。ゴールに向かって仕掛ける選手でいたい」

 クロスへの飛び込んでいく動き出し、スルーパスに反応するスピード、ボールを受けてから左右両足で繰り出される鋭いシュート。久保はストライカーとして、万能な能力を持つ。さらに、もっとゴールに迫るために、課題は「縦への突破や目の前のDFを交わすプレー。そして個人でゴールに直結するプレー」と自覚し、ここまで取り組んできている。

 その意識が移籍後いきなり花を開いた瞬間が、あのスーパーゴールだった。並み居るDFをなぎ倒すように交わしていき、最後は持ち前のシュート技術で冷静に決める。新たに取り組むプレーと、本来の武器が融合した得点となった。

 そして、いざ日本代表として迎えるW杯最終予選。昨年11月のサウジアラビア戦で先発に抜擢され、右サイドの位置から流動的な動きで相手を撹乱した。前半途中に足を痛めて交代してしまったことは残念だったが、今回のUAE戦(23日)とタイ戦(28日)に満を持して臨む。

「代表はクラブでの活躍の延長線上。クラブでできていることを、代表でも出せれば結果につながると思う」

 日本の攻撃陣に新たな風を吹かそうとする存在。久保裕也。クラブで、代表で、ここから自身の存在感を本格的に発揮していく。

《文=西川結城》

日本代表関連生放送予定

2018FIFAワールドカップロシア アジア最終予選

・UAE vs 日本
 3月23日(木) 深夜0:00〜深夜2:50(生中継 NHK BS1、テレビ朝日系)

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