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17/03/10【WOWOWリーガコラム】審判のミスジャッジにスポットを当てるスペインのメディア

(写真:アフロ)

 リーグ優勝争いが激化するにつれて残念ながら激化してきたものがある。ジャッジをめぐるグラウンド外の争いである。第24節のビジャレアル対レアル・マドリードでビジャレアルの選手のハンドが取られR・マドリードにPKが与えられた。ビデオを見ると一度胸に当たった後に手に当たっており、ボールを触る意図はなかったからハンドではなかったと思う。ミスジャッジである。

 だが、話はそこで終わらない。そのPKを決めたR・マドリードが結局勝ち越し。アトレティコ・マドリードに勝利し、暫定で首位に立っていたバルセロナからすぐさま首位を奪い返したからだ。

まず“R・マドリードは審判に贔屓されている”というねじ曲った意見が出て来る。さらにベティス対バルセロナ(http://www.wowow.co.jp/sports/liga/column_kimura1617_20.html)の幻のゴールを思い出して“バルセロナは審判に損害を与えられている”ともう一ねじり。最後に“R・マドリードを優勝させ、バルセロナを優勝させない陰謀がある”というとんでもない暴論にたどり着く。もしそんな陰謀があればコンペティションの全否定。試合をする必要すらない。陰謀の有無をめぐって無意味な議論が続くのを私は同じ報道者としてあきれて眺めている。

 スペインでこういうふうに話がねじ曲っておかしな方向へ行ってしまうのは、メディアやジャーナリストにR・マドリードやバルセロナのファンやアンチがいるからだ。中立、冷静であるべき報道者の立場を忘れ、ファンやアンチとしての頭に血を昇らせたまま書いたり、意見したりする。そのR・マドリード贔屓、バルセロナ贔屓(あるいは両チームのアンチ)の記事をそれぞれのチームのファンやアンチが喜んで読むことによってスポーツ紙が売れる、という構造になっている。

 これはバルセロナがミスジャッジに助けられR・マドリードが損害を与えられた場合でもまったく同じで、最後は“バルセロナ優勝の陰謀がある”という暴論が登場する。審判の中立性を疑っておきながら、自分たちはまったく中立ではないのである。

 念のために言うとミスジャッジは勝敗に決定的な影響を与える。あのゴールが認められ、あのハンドが認められなかったら首位が入れ替わっていたはずだ。陰謀論は論外だとしても、そこは正しい。

 だが、それはトラップミスとかパスミスとかシュートミスとかマークミスとかクリアミスとかセーブミスとかポジショニングミスとか采配ミスとかと同じくらい決定的であるに過ぎない。あのトラップミスがなかったらゴールが決まり、あのマークミスがなかったら失点を防げただろう。交代策が当たっていたら逆転できたはずだ…。

 審判のミスは1試合片手で数えられるほどしかないが、監督と選手のミスは無数にある。なのに、やり玉に上がるのは審判ばかりなのはどう考えてもおかしい。

 実はスペインメディアの政治的な中立性については日本のメディアよりも上なのではないか、と高く評価している。だが、サッカーメディアだけは話が別。良心的な一部を除くと、大部分がファンによるファンのためのメディアである。

 日本のみなさんはスポーツ新聞が丸ごとあるチームのファンとかジャーナリストが特定チームのファンだと公言するような状況に慣れていないと思う。スペインメディアの報道が日本語にすぐに訳される時代だから、陰謀論的なスペイン発の記事を読んでも、「これはファン(あるいはアンチ)の記者が書いたものなんだな」と冷静に受け止めてほしい。さらに一歩進んでファンとアンチの争いを「またやってるよ!」と笑えるようになれば、あなたはリーガ観戦の立派な上級者である。

 日本でリーガ・エスパニョーラのファンであることには、雑音とは無縁にグラウンドの上だけの出来事に集中できるというメリットがある。優勝争いの本当の主役、決定的な役割を握っている監督と選手たちのミスの方にこそ注目してほしい。

《文=木村浩嗣》 

スペイン・リーガエスパニョーラの生放送予定

 

リーガエスパニョーラ第27節

・セビージャ vs レガネス
 3月11日(土) 深夜0:00〜(生中継 WOWOWプライム
・グラナダ vs アトレチコ・マドリード
 3月12日(日) 朝4:30〜(生中継 WOWOWライブ
・デポルティーボ vs バルセロナ
 3月12日(日) 深夜0:00〜(生中継 WOWOWライブ
・レアル・マドリード vs ベティス
 3月13日(月) 朝4:30〜(生中継 WOWOWライブ
・オサスナ vs エイバル(乾貴士)
 3月14日(火) 朝4:30〜(生中継 WOWOWライブ

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