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16/12/29【リーガ】前半戦で見られた戦術的な群雄割拠状態

レアルと差を広げられたバルセロナとアトレチコ(写真:Getty Images)

取りこぼしの目立ったバルセロナとアトレチコ

 順位表だけ見ると、今季前半は「1強」に見える。1つ消化試合が少ない状況で2位と3ポイント差というのは、カンプノウでのクラシコが終わっていることを加味するとレアル・マドリーの圧倒的な優位を意味する。が、FIFAクラブワールドカップ決勝のもたつきが象徴するようにあまり強さは感じなかった。むしろ、ホームで10も勝ち点を落としている2位バルセロナ、6位に低迷するアトレチコ・マドリーの取りこぼしが目立った。

 ただし、監督ジダンのマネージャーとしての能力は特筆すべきだろう。クロース、ベイル、モドリッチ、カセミロ、セルヒオ・ラモス、ペペ、ケイラー・ナバスとレギュラー勢が次々と負傷欠場したが、そのたびに控え組がきちんと穴を埋めた。イスコ、コバチッチ、モラタの成長で選手層の厚さはリーガ1。無敗記録はいつか途絶えるだろうが、後半戦も大崩れすることもないとみる。対照的に、ルイス・エンリケ監督は積極的にローテーションを試みたがパコ・アルカセル、アンドレ・ゴメス、ディネェの新加入組がはいずれも期待を下回るプレーぶり。シメオネ監督の方は「サイクル終了」という言葉もちらつく。さすがに5季目となると選手にも監督にも慣れや油断などの“勤続疲労”が生まれる。戦力から言えば文句なく3番手であり今の状態が底だとみるが、ここ数年のように優勝争いに加わることはないとみる。 

マラガに快勝したセビージャ(写真:Getty Images)

画期的なスタイルを示したセビージャ

 戦術的な観点から言えば、前半戦は「大豊作」だったと言える。重要な意味を持つのがセビージャの存在だ。リーガと言えば、バルセロナとレアル・マドリーを代表とする「ポゼッション組」、アトレチコ・マドリーを代表とする「カウンター組」に大別される。前半戦はポゼッション組に大躍進ソシエダが加わり、ラス・パルマスが力を付け、従来のセルタとともに層を厚くすることになった。カウンター組にも大健闘エイバルが新風を吹き込み、従来のビジャレアル、アスレティック・ビルバオとともに一方の雄を形成することになった。この二大勢力に割って入ったのがサンパオリ監督率いるセビージャである。

 3バック、4バック、5バックを自在に使い分け、ポジションが固定されていないサンパオリのサッカーはポゼッションサッカーではあるが、バルセロナのそれとはまったく異なる。フォーメーション図がほとんど役に立たない自由度の高いスタイルは、あまりにユニーク過ぎて追随する者が出ないだろうから派閥にはなり得ない。だが、新戦術の提案という意味では、大変興味深い。3位という順位の割に内容には乏しかったが、12月に入ってスペクタクルとしての魅力度も上がってきた。このままリーガで上位を維持しCLでも勝ち上がれば、従来の枠組みを壊す画期的なスタイルとして、世界中の注目を集めることになろう。 

堅い守りを見せたアラベス(写真:Getty Images)

弱者の抵抗の術となった5バック

 さらに、昇格組アラベスとレガネスの健闘によって5バックが弱者の抵抗の術として認知されたことも述べておきたい。ボールの後ろに人数を割き自陣に籠るやり方は、攻撃的なサッカーを好むスペインではなかなか市民権を得られなかった。先に述べたカウンター組にしてもスタイルはラインを上げてプレスをかけるアグレッシブなもので、攻撃はショートカウンター中心。アラベスやレガネスのように2トップへのロングボールで活路を開こうという古典的なカウンターではない。グラナダ、オサスナ、スポルティングと下位に低迷するチームが5バックを試して、それでも結果が出せなかったように今も「弱者の窮余の策」という意味合いは強い。だが、巨大な戦力格差があるリーガで、弱小チームが3強に抵抗するために5バック+ロングカウンターを採用するのは、決して不名誉なことではない。むしろ、サプライズが増えることでリーガの魅力は増す。5バックではないがエスパニョールがやはりロングカウンターで結果を出したのも追い風になるだろう。

 以上の“戦術的な群雄割拠状態”が前半戦を魅力的なものにしていた。今のリーガは非常にキャッチフレーズが付けやすいリーグではないか。各チームの戦術的キャラクターが立っていて、見どころが誰にでもわかりやすい。例えばラス・パルマス対ビジャレアルは「ポゼッションVSカウンター」で効果的なプレスを繰り出した方が勝つだろうし、セルタ対ソシエダは「ポゼッションVSポゼッション」でボール支配率勝負、アラベス対レアル・マドリーでは「しのぎにしのいだ末にアラベスのロングカウンターが炸裂するか」が最大の見どころ、アスレティック・ビルバオ対エイバルは「アグレッシブなハイプレスからのカウンターの応酬」というふうに、試合のシナリオが想像つくのだ。セビージャ絡みの試合は逆にまったく読めないが、それはそれで何が飛び出して来るかわらない楽しみがある。

 3強状態が崩れたことで優勝争いが味気なくなりかねないが、戦術的には例年にない“大混戦”となっている。成績や贔屓チームとは無関係に試合の面白さを満喫できる点が、後半戦もリーガの最大の魅力となるに違いない。

《文=木村浩嗣》

スペイン・リーガエスパニョーラの生放送予定

リーガエスパニョーラ第17節

・レアル・マドリード vs グラナダ
 1月7日(土) 夜8:50〜(生中継 WOWOWプライム
・エイバル vs アトレチコ・マドリード(乾貴士)
 1月7日(土) 深夜0:00〜(生中継 WOWOWライブ
・ソシエダ vs セビージャ(清武弘嗣)
 1月8日(日) 朝4:30〜(生中継 WOWOWライブ
・ビジャレアル vs バルセロナ
 1月9日(月) 朝4:30〜(生中継 WOWOWライブ

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