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16/12/15【週刊 長友佑都】ラゾビッチに手を焼き、現地メディアからの批判が集中

バランスの悪いチームで、やり玉に挙げられた長友(写真:Getty Images)

理不尽に厳しい周囲の声

 DF長友佑都は11日のジェノア戦でフル出場を果たし、インテルもステファノ・ピオーリ監督就任以来初の無失点勝利を飾った。しかしながら、彼には地元メディアからの批判が集中していた。試合後の記者会見ではそうでもなかったが、別の場所で行われた地元テレビ局のインタビューでは「なぜ長友の左サイドはあそこまでやられたのか」「(イバン・)ペリシッチではなく長友を先発させたのはなぜか」といった質問が次々と浴びせられていた。特に前半、対面の右ウイングバックであるダルコ・ラゾビッチの侵入を許し、あわやゴールといったシュートやアーリークロスを上げさせたことがたまらなく許せなかったらしい。

 この試合、ジェノアは左から右への素早いサイドチェンジで1対1を作り出すという戦術をとっていた。一方、超攻撃的な3トップを敷いたインテルは全体のバランスが悪かった。ろくなプレスも掛からず、またコースも切れずにパスが回され、ラゾビッチが後方からフリーで駆け上がってくる。味方のマークがずれたところのカバーに回っていたり、また攻め上がっていたところを味方がロストしたりで戻りきれなかったというエクスキューズがあっても、サイドからやられたという単純な事実があればすべて長友のせいにされるのは毎度のことだ。

 第一、ラゾビッチに手を焼くこと自体は不名誉ではない。リーグを通じて今一番調子の良いアウトサイドで、第14節のユベントス戦ではDFアレックス・サンドロが火だるまにされている。この事実を知っていれば、結果的に崩されなかった長友のパフォーマンスはそこまで非難されるべきでもあるまい。爆発的なスピードを誇るラゾビッチに振り切られたシーンは一度あったが(珍しいことだが)、1対1で対峙することができた局面ではきちんと抑えられてはいた。

 もっとも左サイドの守備の連携が乱れていたのは、長友も決して無関係ではないだろう。高い位置を張って対面をけん制するのか、それとも引いて自重気味のポジショニングをするのかが曖昧になっていた印象だった。一方で中盤は2枚だったからサイドのサポートには足りず、さらに前方の左FWはウイングというよりもセンターFWにかなり寄ったポジションを取っていたから、左サイドには広大なスペースができていた。後半には中盤にアンカーを設けてMF一人がサイドのカバーにも回る形にもなり少し安定を取り戻したが、いずれにせよ長友はもう少し高く位置を張って、ラゾビッチを捕まえるべきではなかっただろうか。加えてサイドの裏のスペースに侵入された際、後方を守るDFジェイソン・ムリージョとのマークの受け渡しも乱れており、これもサイドに穴を作る要因となっていた印象だった。

「長友を使ったのはバランスを整えるためだ。前線の3人は距離を縮めてプレイさせたかったし、その上で右サイドに(アントニオ・)カンドレーバを使っているような状態だと守備のバランスが取れなくなる」とピオーリ監督は地元TVのインタビューに対して語っていたが、この点で前半の長友が盤石なバランスを提供したとは言い難かった。サイドのつなぎなど攻撃面では、フィオレンティーナ戦とナポリ戦で先発したDFクリスティアン・アンサルディの方が器用に絡めていた。せめて守備や戦術面での機能性を盤石なものにしておかないと、定位置奪回のアピールは難しくなるだろう。

 この時期特有の濃霧で記者席からはよく見えなかったが、インテルサポーターの巣食う北のゴール裏には「走らずにやる気のない奴は一月に出て行け」というキツイ横断幕が選手たちに掲げられていたという。それだけインテリスタたちは、勝てないチームに神経を尖らせている。プライドの高い彼らにとっては、本来格上であるべきインテルの選手が格下相手に苦戦すること自体もまた"怠けた行為"と映るのかもしれない。メディアも含めたその辺りの理不尽なまでの厳しさは、長友が一番骨身に染みている程分かっていることだろう。次のチャンスには、グウの音も言わせないほどのパフォーマンスを見せつけて強力なアピールをして欲しい。

《取材・文 神尾光臣》

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