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16/05/19【ACL】強豪・上海上港に勝利したFC東京、狙いが凝縮された“25秒間”

水沼の2ゴールで第1レグに勝利したFC東京(写真:Getty Images)

ホームで2-1の勝利を収めたFC東京

 AFCチャンピオンズリーグ(ACL)ラウンド16で中国の上海上港をホームに迎えたFC東京は43分にMF水沼宏太のFKで先制し、後半の早い時間帯に1点を返されたものの、65分には鮮やかなカウンターの二次攻撃からDF徳永悠平のクロスに再び水沼が合わせる形で勝ち越しゴールを決め、そのまま2−1で勝利。ベスト8進出に前進した。

 まさに城福浩監督の率いるFC東京が狙う攻撃がそのまま2得点目に集約された。上海上港に対して中盤のMF羽生直剛とMF高橋秀人による厳しいプレッシャーでマイボールにしたところから、センターバックのDF森重真人が左サイドで投入されたばかりのFW阿部拓馬に素早く縦パスを付ける。そこから左スペースの徳永にボールが渡ると、持ち上がりに合わせて阿部、MF米本拓司、FW前田遼一、水沼がアタッキングサードに向けて加速した。

 徳永は相手のボランチとセンターバックの合間を走る米本にパスを出すと、それに合わせて中に流れた阿部がショートパスを受け、さらにカットインしかけたところでクリアされた。しかし、そのセカンドボールを相手MFウー・レイに競り勝った高橋がヘッドで前に折り返すと、羽生、阿部と細かくつないで前方のポストプレーにつなげ、バイタルエリアの左で前を向いてボールを持った米本が左のオープンスペースに展開。そこには徳永がいた。

 徳永がボールを内側にトラップしながら中を見た時、ゴール前に走り込んでいたのは羽生、阿部、前田の3人。羽生がニア、阿部がセンターを突き、ファーよりの前田は彼ら2人に相手DFが合わせて下がるのを見ながら、少し遅れ気味に進み出て、手前のスペースでクロスを受けようとした。しかし、静止状態からゴール前を見られる状況にあった徳永が選択したのはさらに奥側だった。

 上海上港は4バックと2人のボランチがペナルティーエリアまで下がって対応していたが、ボールホルダーの徳永と羽生、阿部、前田に引き付けられる形でファーサイドを完全に空けてしまっていたのだ。そこにFC東京は水沼と右サイドバックのDF橋本拳人が走り込んできたが、徳永の実質的にラストパスと言えるクロスに右足のハーフボレーで合わせたのはインサイド側の水沼だった。ボールはGKヤン・ジュンリンの正面に飛んだものの、至近距離の反応が遅れたGKの両手を弾いてゴールネットの上部を揺らした。

 ボールを奪ったところから25秒ほど。その間にセカンドボールを挟んで10本のパスがつながれ、起点となった森重を含めて9人の選手が攻撃に絡んだことになる。前半の見事な直接FKに続き2点目をあげた水沼は相手のディフェンスがクロスに対してボールウォッチャーになり、ファーサイドが空きがちになる傾向を把握し、狙っていたという。そのイメージを共有していたところで、さらに後方からオーバーラップした橋本と動きが重なったわけだが、短い時間にこうした厚みのある攻撃をチャンレンジしたのは上海上港の守備スタイルによるところもある。 

持ち前の運動量を発揮した米本(写真:Getty Images)

エースを欠いていた上海上港

 グループリーグから見事な攻撃サッカーで対戦相手を凌駕してきた上海上港はFWダリオ・コンカ、FWエウケソン、FWアサモア・ギャンの外国人“助っ人”を中心に攻撃を形成しながら、セリエAでスクデットを獲得するなど豊富な実績を誇るスベン・ゴラン・エリクソン監督はチームとしての正確なパスワークを植え付けた。この日はエースのギャンが欠場したが、やはりコンカとエウケソンを起点に左右ウィングのFWウー・レイやFWルー・ウェンジュンが流動的に絡む攻撃は危険だった。

 前半はFC東京がハードワークと的確なチェックで主導権を握り、流れから大きなチャンスはつくらせなかったが、ボールポゼッションは56%でホームのFC東京を上回った。そして後半の立ち上がりには自慢の攻撃力がはまる形で、コンカのスルーパスにルー・ウェンジュンが抜け出し、シュートをGK秋元陽太が弾いたリバウンドにウー・レイが詰める形で同点ゴールとなった。

 そうした質の高い攻撃の一方で、ディフェンスは4バックとボランチの2人に依存しやすい部分がある。特に自陣まで下がった状況でも前から4人の攻撃陣があまり戻って守備に参加しない。いわゆる“分業型”なのだ。もちろん4人の選手が攻め残るということは単純にサボるという意味ではなく、相手に対して常にカウンターの危険性を与えることになる。ただし、FC東京の2点目の様に相手のパスがうまくつながり、中盤がボールを奪われたところから、二次攻撃でゴール前に厚みがかかると守備が後手に回り、穴も生じやすくなる。そこは城福監督も戦前から見抜いていたはずだ。

 Jリーグではなかなか目指す攻撃スタイルが機能せず、苦しい戦いが続くFC東京だが、アジアの戦いにおいて相手の長所を消し、弱点を突く中に自分たちの狙いをうまく入れた戦いができている。もちろん運動量や球際のところも含め、厳しく戦えていることも要因だ。ただ、2試合の合計スコアで決まる決勝トーナメントは180分の前半を2−1で折り返したにすぎないとも言える。今度はアウェーの上海でどんな戦いを見せるのか。非常に興味深い余韻を残した第1レグだった。

《文=河治良幸》

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