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16/05/05【CL】迫力を欠いたシティを破り、レアルが決勝に勝ち進む

アトレチコの待つ決勝へ進んだレアル・マドリー(写真:Getty Images)

長所を消し合った両チーム

 昨日のバイエルン対アトレチコ・マドリーとは対照的に、レアル・マドリーの決勝進出という結果だけが特筆すべきで、内容はすぐに忘れ去られるだろう試合だった。攻撃タレントを並べたはずの両チームの顔合わせは、180分間でわずか1ゴールという守り合い、いや、互いの長所の消し合いとなった。

 その唯一のゴールもUEFAはMFフェルナンドのオウンゴールと認定した。19分DFダニエル・カルバハルのパスを受けたFWガレス・ベイルが顔を上げ、ファーポストを狙って上げたセンタリングが、相手ボランチの足に当たりGKの頭の上を越え、ゴール左上の隅に飛び込んだ。“ゴラッソ”(スーパーゴール)であればヒーロー、ベイルは少なくとも記憶に残ることになっただろうが……。

 それでもレアル・マドリーがファイナリストに相応しいことには疑いがない。90分間でチャンスらしいチャンスが2度、44分のMFフェルナンジーニョのポストに当たるシュート、88分のFWセルヒオ・アグエロの枠をかすめるミドルだけだったマンチェスター・シティに対し、レアル・マドリーには49分のFWクリスティアーノ・ロナウド、51分のMFルカ・モドリッチ、62分のC・ロナウド、63分の枠に嫌われたベイルのヘディング、ロスタイムのMFハメス・ロドリゲスと5度のチャンスがあったからだ。

 レアル・マドリーが追加点を挙げられず、マンチェスター・シティの同点ゴールが決勝進出を意味する状態が、70分間以上続いた。ミスやアクシデントが命取りとなる緊張感が、残り時間が少なくなるにつれて高まっていった。それが唯一この試合が心をかき乱したもの、と言って良かった。

 内容では優位に立っていたレアル・マドリーにとっては明らかに不利な取引だったが、一向に攻撃のアクセルを踏み込まず得点よりも失点を恐れているかのようなマンチェスター・シティにお付き合いする形で、リズムを下げて止めを刺すよりもスコアを維持しようとした。その気持ちがプレーに現れたのか得意なはずのカウンターで、レアル・マドリーの選手たちのパスが少しずつ短くなりGKとの1対1といった決定的と呼べるシーンはなかった。マンチェスター・シティの高いディフェンスラインを考えれば、裏へパスを出しても良いような場面でも彼らは安全第一のボールキープを選択していた。

 こうして、リスクを冒したがらない両チームがにらみ合ったまま時計の針だけが進み、アクシデントやミスがあれば命取りという、ナーバスな状態が続いた。両チームのファンはドキドキしただろう。4分のアディショナルタイムをGKケイラー・ナバスの治療時間もあって5分以上とった主審に、サンティアゴベルナベウの観衆が大ブーイングを浴びせたのも無理はない。だが、どちらのファンでもない中立な観戦者にとっては、退屈極まりなかった。前日のバイエルン対アトレチコ・マドリーでも最後の20分間は1ゴールでバイエルンが決勝進出、という状態で、“攻めるバイエルン、守るアトレチコ・マドリー”にドキドキさせられたのだが、こちらは“攻めない両チーム”という見かけは一緒でも中身はまったくの別物だった。

中盤での戦いで優位に立ったレアル(写真:Getty Images)

カセミロの穴を埋めたクロース

 1-0でOKというレアル・マドリーはともかく、マンチェスター・シティのマヌエル・ペジェグリーニ監督の勝ち上がりプランはどこにあったのだろう? 期待のMFケビン・デ・ブライネは右サイドでもトップ下でも機能せずパスミスを繰り返し(前方へのパス18本中成功はわずか10本)、1対1でもことごとく敗れた。MFヤヤ・トゥーレはトップ下でもボランチでも全盛期を知る者にとっては悲しくなるようなプレーに終始した。ペジェグリーニ監督はフェルナンドの1ボランチ、フェルナンドとフェルナンジーニョの2ボランチ、彼ら2人とヤヤ・トゥーレの3ボランチとシステムをいじってはいたが、効果はなかった。スペインメディアが軽蔑的に評するように、“中盤と前線の繋ぎ役になれるのはシルバだけ”という、1人の選手に依存したチームなのだろうか? それとも、レアル・マドリーの守備組織が素晴らしく無力化されてしまったのだろうか?

 ジネディーヌ・ジダンが監督になってからのレアル・マドリーの守備力が上がっているのは事実である。失点率ではラファエル・ベニテス、カルロ・アンチェロッティはもちろんあのジョゼ・モウリーニョ時代をも下回っている。だが、守りの要であるMFカセミロがこの夜は不在で、中盤の底にはMFトニ・クロースが入っていた。試合前、カセミロの欠場はFWカリム・ベンゼマのそれ以上に不安視されていたのだが、フタを開けてみれば、クロースは90分間ノーファウルだった。身を挺してカウンターの芽を摘む、という大役を担っていた彼にしてそれである。レアル・マドリーが犯したファウル数はわずか5。ボール支配率が70%近かったというのならわかるが、レアル・マドリーの支配率は55%に過ぎない。半分近く持っていたボールをマンチェスター・シティが、いかに有効に使えなかったのかわかろうというものだ。

 「我われに負けは相応しくない。引き分けが妥当な結果だった」とペジェグリーニ監督は振り返った。“我われは勝者に相応しい”と言えなかったところが悲しい。

《文=木村浩嗣》

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